/\》は自分《じぶん》の周圍《まはり》に、些《いさゝか》も知識《ちしき》を見《み》ず、聞《き》かずで、我々《われ/\》は全然《まるで》快樂《くわいらく》を奪《うば》はれてゐるやうなものです。勿論《もちろん》我々《われ/\》には書物《しよもつ》が有《あ》る。然《しか》し是《これ》は活《い》きた話《はなし》とか、交際《かうさい》とかと云《い》ふものとは又《また》別《べつ》で、餘《あま》り適切《てきせつ》な例《れい》では有《あ》りませんが、例《たと》へば書物《しよもつ》はノタで、談話《だんわ》は唱歌《しやうか》でせう。』
『其《そ》れは眞實《まつたく》です。』と、郵便局長《いうびんきよくちやう》は云《い》ふ。
 二人《ふたり》は默《だま》る。厨房《くりや》からダリユシカが鈍《にぶ》い浮《う》かぬ顏《かほ》で出《で》て來《き》て、片手《かたて》で頬杖《ほゝづゑ》を爲《し》て、話《はなし》を聞《き》かうと戸口《とぐち》に立留《たちどま》つてゐる。
『あゝ君《きみ》は今《いま》の人間《にんげん》から知識《ちしき》をお望《のぞ》みになるのですか?』
とミハイル、アウエリヤヌヰチは嘆息《たんそく》して
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