了《しま》ふ。院長《ゐんちやう》は考込《かんがへこ》んでゐる、ミハイル、アウエリヤヌヰチは何《なに》か面白《おもしろ》い話《はなし》を爲《し》やうとして、愉快《ゆくわい》さうになつてゐる。
 話《はなし》は毎《いつ》も院長《ゐんちやう》から、初《はじ》まるので。
『何《なん》と殘念《ざんねん》なことぢや無《な》いですかなあ。』
と、アンドレイ、エヒミチは頭《かしら》を振《ふ》りながら、相手《あひて》の眼《め》を見《み》ずに徐々《のろ/\》と話出《はなしだ》す。彼《かれ》は話《はなし》をする時《とき》に人《ひと》の眼《め》を見《み》ぬのが癖《くせ》。
『我々《われ/\》の町《まち》に話《はなし》の面白《おもしろ》い、知識《ちしき》のある人間《にんげん》の皆無《かいむ》なのは、實《じつ》に遺憾《ゐかん》なことぢや有《あ》りませんか。是《これ》は我々《われ/\》に取《と》つて大《おほい》なる不幸《ふかう》です。上流社會《じやうりうしやくわい》でも卑劣《ひれつ》なこと以上《いじやう》には其教育《そのけういく》の程度《ていど》は上《のぼ》らんのですから、全《まつた》く下等社會《かとうしやくわい》
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