《ふる》はして怒立《おこりた》ち、雷《らい》のやうな聲《こゑ》で、默《だま》れ! と一|喝《かつ》する。其故《それゆゑ》に郵便局《いうびんきよく》に行《ゆ》くのは怖《こは》いと云《い》ふは一|般《ぱん》の評判《ひやうばん》。が、彼《かれ》は町《まち》の者《もの》を恁《か》く部下《ぶか》のやうに遇《あつか》ふにも拘《かゝは》らず、院長《ゐんちやう》アンドレイ、エヒミチ計《ばか》りは、教育《けういく》があり、且《か》つ高尚《かうしやう》な心《こゝろ》を有《も》つてゐると、敬《うやま》ひ且《か》つ愛《あい》してゐた。
『やあ、私《わたし》です。』
と、ミハイル、アウエリヤヌヰチは毎《いつも》のやうに恁《か》う云《い》ひながら、アンドレイ、エヒミチの家《いへ》に入《はひ》つて來《き》た。
二人《ふたり》は書齋《しよさい》の長椅子《ながいす》に腰《こし》を掛《か》けて、暫時《ざんじ》莨《たばこ》を吹《ふ》かしてゐる。
『ダリユシカ、ビールでも欲《ほ》しいな。』
と、アンドレイ、エヒミチは云《い》ふ。
初《はじ》めの壜《びん》は二人共《ふたりとも》無言《むごん》の行《ぎやう》で呑乾《のみほ》して
前へ
次へ
全197ページ中62ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
チェーホフ アントン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング