しよ》爲初《しはじ》めると毎《いつ》も數時間《すうじかん》は續樣《つゞけさま》に讀《よ》むのであるが、少《すこ》しも其《そ》れで疲勞《つかれ》ぬ。彼《かれ》の書見《しよけん》は、イワン、デミトリチのやうに神經的《しんけいてき》に、迅速《じんそく》に讀《よ》むのではなく、徐《しづか》に眼《め》を通《とほ》して、氣《き》に入《い》つた所《ところ》、了解《れうかい》し得《え》ぬ所《ところ》は、留《とゞま》り/\しながら讀《よ》んで行《ゆ》く。書物《しよもつ》の側《そば》には毎《いつ》もウオツカの壜《びん》を置《お》いて、鹽漬《しほづけ》の胡瓜《きうり》や、林檎《りんご》が、デスクの羅紗《らしや》の布《きれ》の上《うへ》に置《お》いてある。半時間毎《はんじかんごと》位《くらゐ》に彼《かれ》は書物《しよもつ》から眼《め》を離《はな》さずに、ウオツカを一|杯《ぱい》注《つ》いでは呑乾《のみほ》し、而《さう》して矢張《やはり》見《み》ずに胡瓜《きうり》を手探《てさぐり》で食《く》ひ缺《か》ぐ。
三|時《じ》になると彼《かれ》は徐《しづか》に厨房《くりや》の戸《と》に近《ちか》づいて咳拂《せきばら》
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