んさつ》するのであつた。
 院長《ゐんちやう》アンドレイ、エヒミチは疾《とう》から町《まち》の病家《びやうか》を有《も》たぬのを、却《かへ》つて可《い》い幸《さいはひ》に、誰《だれ》も自分《じぶん》の邪魔《じやま》をするものは無《な》いと云《い》ふ考《かんがへ》で、家《いへ》に歸《かへ》ると直《す》ぐ書齋《しよさい》に入《い》り、讀《よ》む書物《しよもつ》の澤山《たくさん》あるので、此《こ》の上《うへ》なき滿足《まんぞく》を以《もつ》て書見《しよけん》に耽《ふけ》るのである、彼《かれ》は月給《げつきふ》を受取《うけと》ると直《す》ぐ半分《はんぶん》は書物《しよもつ》を買《か》ふのに費《つひ》やす、其《そ》の六|間《ま》借《か》りてゐる室《へや》の三つには、書物《しよもつ》と古雜誌《ふるざつし》とで殆《ほとんど》埋《うづま》つてゐる。彼《かれ》が最《もつと》も好《この》む所《ところ》の書物《しよもつ》は、歴史《れきし》、哲學《てつがく》で、醫學上《いがくじやう》の書物《しよもつ》は、唯《たゞ》『醫者《ヴラーチ》』と云《い》ふ一|雜誌《ざつし》を取《と》つてゐるのに過《す》ぎぬ。讀書《どく
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