のに時間《じかん》は少《すく》ない、で、毎《いつ》も極《ご》く簡單《かんたん》な質問《しつもん》と、塗藥《ぬりぐすり》か、蓖麻子油位《ひましあぶらぐらゐ》の藥《くすり》を渡《わた》して遣《や》るのに留《とゞ》まつてゐる。院長《ゐんちやう》は片手《かたて》で頬杖《ほゝづゑ》を突《つ》きながら考込《かんがへこ》んで、唯《たゞ》機械的《きかいてき》に質問《しつもん》を掛《か》けるのみである。代診《だいしん》のセルゲイ、セルゲヰチが時々《とき/″\》手《て》を擦《こす》り/\口《くち》を入《い》れる。『此《こ》の世《よ》には皆《みな》人《ひと》が病氣《びやうき》になります、入用《いりよう》なものがありません、何《なん》となれば、是《これ》皆《みな》親切《しんせつ》な神樣《かみさま》に不熱心《ふねつしん》でありますから。』診察《しんさつ》の時《とき》に院長《ゐんちやう》はもう疾《と》うより手術《しゆじゆつ》を爲《す》る事《こと》は止《や》めてゐた。彼《かれ》は血《ち》を見《み》るさへ不愉快《ふゆくわい》に感《かん》じてゐたからで。又《また》子供《こども》の咽喉《のど》を見《み》るので口《くち》を
前へ 次へ
全197ページ中56ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
チェーホフ アントン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング