服《ふく》を着換《きか》へて茶《ちや》を呑《の》み、其《そ》れから書齋《しよさい》に入《はひ》るか、或《あるひ》は病院《びやうゐん》に行《い》くかである。病院《びやうゐん》では外來患者《ぐわいらいくわんじや》がもう診察《しんさつ》を待構《まちかま》へて、狹《せま》い廊下《らうか》に多人數《たにんず》詰掛《つめか》けてゐる。其側《そのそば》を小使《こづかひ》や、看護婦《かんごふ》が靴《くつ》で楝瓦《れんぐわ》の床《ゆか》を音高《おとたか》く踏鳴《ふみなら》して往來《わうらい》し、病院服《びやうゐんふく》を着《き》てゐる瘠《や》せた患者等《くわんじやら》が通《とほ》つたり、死人《しにん》も舁《かつ》ぎ出《だ》す、不潔物《ふけつぶつ》を入《い》れた器《うつは》をも持《も》つて通《とほ》る。子供《こども》は泣《な》き叫《さけ》ぶ、通風《とほりかぜ》はする。アンドレイ、エヒミチは恁云《かうい》ふ病院《びやうゐん》の有樣《ありさま》では、熱病患者《ねつびやうくわんじや》、肺病患者《はいびやうくわんじや》には最《もつと》も可《よ》くないと、始終《しゞゆう》思《おも》ひ/\するのであるが、其《そ》れを
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