めし》にしたいものだとか云《い》ふのが常《つね》である、其故《それゆゑ》に會計係《くわいけいがゝり》に向《むか》つても、盜《ぬす》むではならぬなどとは到底《たうてい》云《い》はれぬ。無論《むろん》放逐《はうちく》することなどは爲《な》し得《え》ぬので。人《ひと》が彼《かれ》を欺《あざむ》いたり、或《あるひ》は諂《へつら》つたり、或《あるひ》は不正《ふせい》の勘定書《かんぢやうがき》に署名《しよめい》をする事《こと》を願《ねが》ひでもされると、彼《かれ》は蝦《えび》のやうに眞赤《まつか》になつて只管《ひたすら》に自分《じぶん》の惡《わる》いことを感《かん》じはする。が、猶且《やはり》勘定書《かんぢやうがき》には署名《しよめい》をして遣《や》ると云《い》ふやうな質《たち》。
 初《はじめ》にアンドレイ、エヒミチは熱心《ねつしん》に其職《そのしよく》を勵《はげ》み、毎日《まいにち》朝《あさ》から晩《ばん》まで、診察《しんさつ》をしたり、手術《しゆじゆつ》をしたり、時《とき》には産婆《さんば》をも爲《し》たのである、婦人等《ふじんら》は皆《みな》彼《かれ》を非常《ひじやう》に褒《ほ》めて名醫《
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