き》すら無《な》いのである。浴盤《よくばん》には馬鈴薯《じやがたらいも》が投込《なげこ》んであるやうな始末《しまつ》、代診《だいしん》、會計《くわいけい》、洗濯女《せんたくをんな》は、患者《くわんじや》を掠《かす》めて何《なん》とも思《おも》はぬ。話《はなし》には前《さき》の院長《ゐんちやう》は往々《まゝ》病院《びやうゐん》のアルコールを密賣《みつばい》し、看護婦《かんごふ》、婦人患者《ふじんくわんじや》を手當次第《てあたりしだい》妾《めかけ》としてゐたと云《い》ふ。で、町《まち》では病院《びやうゐん》の這麼有樣《こんなありさま》を知《し》らぬのでは無《な》く、一|層《そう》棒大《ぼうだい》にして亂次《だらし》の無《な》いことを評判《ひやうばん》してゐたが、是《これ》に對《たい》しては人々《ひと/″\》は至《いた》つて冷淡《れいたん》なもので、寧《むし》ろ病院《びやうゐん》の辯護《べんご》をしてゐた位《くらゐ》。病院《びやうゐん》などに入《はひ》るものは、皆《みな》病人《びやうにん》や百姓共《ひやくしやうども》だから、其位《そのくらゐ》な不自由《ふじいう》は何《なん》でも無《な》いこと
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