《ど》丈《だ》け、理髮師《とこや》のセミヨン、ラザリチ計《ばか》り此《こゝ》へ來《く》る、其男《そのをとこ》は毎《いつ》も醉《よ》つてニコ/\しながら遣《や》つて來《き》て、ニキタに手傳《てつだ》はせて髮《かみ》を刈《か》る、彼《かれ》が見《み》えると患者等《くわんじやら》は囂々《がや/\》と云《い》つて騷《さわ》ぎ出《だ》す。
恁《か》く患者等《くわんじやら》は理髮師《とこや》の外《ほか》には、唯《たゞ》ニキタ一人《ひとり》、其《そ》れより外《ほか》には誰《たれ》に遇《あ》ふことも、誰《たれ》を見《み》ることも叶《かな》はぬ運命《うんめい》に定《さだ》められてゐた。
しかるに近頃《ちかごろ》に至《いた》つて不思議《ふしぎ》な評判《ひやうばん》が院内《ゐんない》に傳《つた》はつた。
院長《ゐんちやう》が六|號室《がうしつ》に足繁《あしゝげ》く訪問《はうもん》し出《だ》したとの風評《ひやうばん》。
(五)
不思議《ふしぎ》な風評《ひやうばん》である。
ドクトル、アンドレイ、エヒミチ、ラアギンは風變《ふうがは》りな人間《にんげん》で、青年《せいねん》の頃《ころ》
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