い》つてゐる樣子《やうす》。誰《たれ》か若《も》し近着《ちかづき》でもすれば、極《きまり》惡《わる》さうに急《いそ》いで胸《むね》から何《なに》かを取《と》つて隱《かく》して了《しま》ふ。然《しか》し其祕密《そのひみつ》は直《すぐ》に解《わか》るのである。
『私《わたくし》をお祝《いは》ひなすつて下《くだ》さい。』
と、彼《かれ》は時々《とき/″\》イワン、デミトリチに云《い》ふことがある。
『私《わたくし》は第《だい》二|等《とう》のスタニスラウの勳章《くんしやう》を貰《もら》ひました。此《こ》の第《だい》二|等《とう》の勳章《くんしやう》は、全體《ぜんたい》なら外國人《ぐわいこくじん》でなければ貰《もら》へないのですが、私《わたくし》には其《そ》の、特別《とくべつ》を以《もつ》てね、例外《れいぐわい》と見《み》えます。』
と、彼《かれ》は訝《いぶ》かるやうに些《ちよつ》と眉《まゆ》を寄《よ》せて微笑《びせう》する。
『實《じつ》を申《まを》しますと、是《これ》はちと意外《いぐわい》でしたので。』
『私《わたくし》は奈何《どう》もさう云《い》ふものに就《つ》いては、全然《まるで》解《
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