ま》して、隱《かくし》にでも密《そつ》と賄賂《わいろ》を突込《つきこ》みは爲《せ》ぬか、其《そ》れを訴《うつた》へられでも爲《せ》ぬか、或《あるひ》は公書《こうしよ》の如《ごと》きものに詐欺《さぎ》同樣《どうやう》の間違《まちがひ》でも爲《し》はせぬか、他人《たにん》の錢《ぜに》でも無《な》くしたり爲《し》はせぬか。と、無暗《むやみ》に恐《おそろし》くてならぬので。
春《はる》になつて雪《ゆき》も次第《しだい》に解《と》けた或日《あるひ》、墓場《はかば》の側《そば》の崖《がけ》の邊《あたり》に、腐爛《ふらん》した二つの死骸《しがい》が見付《みつ》かつた。其《そ》れは老婆《らうば》と、男《をとこ》の子《こ》とで、故殺《こさつ》の形跡《けいせき》さへ有《あ》るのであつた。町《まち》ではもう到《いた》る所《ところ》、此《こ》の死骸《しがい》のことゝ、下手人《げしゆにん》の噂計《うはさばか》り、イワン、デミトリチは自分《じぶん》が殺《ころ》したと思《おも》はれは爲《せ》ぬかと、又《また》しても氣《き》が氣《き》ではなく、通《とほり》を歩《ある》きながらも然《さう》思《おも》はれまいと微笑《び
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