せう》しながら行《い》つたり、知人《しりびと》に遇《あ》ひでもすると、青《あを》くなり、赤《あか》くなりして、那麼《あんな》弱者共《よわいものども》を殺《ころ》すなどと、是程《これほど》憎《にく》むべき罪惡《ざいあく》は無《な》いなど、云《い》つてゐる。が、其《そ》れも此《こ》れも直《ぢき》に彼《かれ》を疲勞《つか》らして了《しま》ふ。彼《かれ》は乃《そこで》ふと[#「ふと」に傍点]思《おも》ひ着《つ》いた、自分《じぶん》の位置《ゐち》の安全《あんぜん》を計《はか》るには、女主人《をんなあるじ》の穴藏《あなぐら》に隱《かく》れてゐるのが上策《じやうさく》と。而《さう》して彼《かれ》は一|日中《にちゞゆう》、又《また》一晩中《ひとばんぢゆう》、穴藏《あなぐら》の中《なか》に立盡《たちつく》し、其翌日《そのよくじつ》も猶且《やはり》出《で》ぬ。で、身體《からだ》が甚《ひど》く凍《こゞ》えて了《しま》つたので、詮方《せんかた》なく、夕方《ゆふがた》になるのを待《ま》つて、こツそり[#「こツそり」に傍点]と自分《じぶん》の室《へや》には忍《しの》び出《で》て來《き》たものゝ、夜明《よあけ》まで
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