ひと》は言《い》ふてゐる位《くらゐ》。で、彼《かれ》は此《こ》の町《まち》の活《い》きた字引《じびき》とせられてゐた。
彼《かれ》は非常《ひじやう》に讀書《どくしよ》を好《この》んで、屡※[#二の字点、1−2−22]《しば/\》倶樂部《くらぶ》に行《い》つては、神經的《しんけいてき》に髭《ひげ》を捻《ひね》りながら、雜誌《ざつし》や書物《しよもつ》を手當次第《てあたりしだい》に剥《は》いでゐる、讀《よ》んでゐるのではなく咀《か》み間合《まにあ》はぬので鵜呑《うのみ》にしてゐると云《い》ふやうな鹽梅《あんばい》。讀書《どくしよ》は彼《かれ》の病的《びやうてき》の習慣《しふくわん》で、何《な》んでも凡《およ》そ手《て》に觸《ふ》れた所《ところ》の物《もの》は、其《そ》れが縱令《よし》去年《きよねん》の古新聞《ふるしんぶん》で有《あ》らうが、暦《こよみ》であらうが、一|樣《やう》に饑《う》えたる者《もの》のやうに、屹度《きつと》手《て》に取《と》つて見《み》るのである。家《いへ》にゐる時《とき》も毎《いつ》も横《よこ》になつては、猶且《やはり》、書見《しよけん》に耽《ふ》けつてゐる。
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