ンドレイ、エヒミチはアツと云《い》つたまゝ、緑色《みどりいろ》の大浪《おほなみ》が頭《あたま》から打被《うちかぶ》さつたやうに感《かん》じて、寐臺《ねだい》の上《うへ》に引《ひ》いて行《ゆ》かれたやうな心地《こゝち》。口《くち》の中《うち》には鹽氣《しほけ》を覺《おぼ》えた、大方《おほかた》齒《は》からの出血《しゆつけつ》であらう。彼《かれ》は泳《およ》がんと爲《す》るものゝやうに兩手《りやうて》を動《うご》かして、誰《たれ》やらの寐臺《ねだい》にやう/\取縋《とりすが》つた。と又《また》も此時《このとき》振下《ふりおろ》したニキタの第《だい》二の鐵拳《てつけん》、背骨《せぼね》も歪《ゆが》むかと悶《もだ》ゆる暇《ひま》もなく打續《うちつゞい》て、又々《また/\》三|度目《どめ》の鐵拳《てつけん》。
イワン、デミトリチは此時《このとき》高《たか》く叫聲《さけびごゑ》。彼《かれ》も打《ぶ》たれたのであらう。
其《そ》れよりは室内《しつない》復《また》音《おと》もなく、ひツそり[#「ひツそり」に傍点]と靜《しづま》り返《かへ》つた。折《をり》から淡々《あは/\》しい月《つき》の光《ひか
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