て來《く》るやうに言付《いひつ》けますから……奈何《どう》して這麼眞暗《こんなまつくら》な所《ところ》にゐられませう……我慢《がまん》爲切《しき》れません。』
 アンドレイ、エヒミチは戸口《とぐち》の所《ところ》に進《すゝ》んで、戸《と》を開《あ》けた。するとニキタが躍上《をどりあがつ》て來《き》て、其前《そのまへ》に立塞《たちふさが》る。
『何方《どちら》へ! 可《い》けません、可《い》けません!』と、彼《かれ》は叫《さけ》ぶ。『もう眠《ね》る時《とき》ですぞ!』
『いや些《ち》と庭《には》を歩《ある》いて來《く》るのだ。』と、アンドレイ、エヒミチは怖々《おど/\》する。
『可《い》けません、可《い》けません! 那樣事《そんなこと》を爲《さ》せても可《い》いとは誰《たれ》からも言付《いひつ》かりません。御存《ごぞん》じでせう。』
 云《い》ふなりニキタは戸《と》をぱたり[#「ぱたり」に傍点]。而《さう》して背《せ》を閉《し》めた戸《と》に當《あ》てゝ猶且《やはり》其所《そこ》に仁王立《にわうだち》。
『然《しか》し俺《おれ》が出《で》たつて其《そ》れが爲《ため》に誰《だれ》が何《なん
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