う》の拳《こぶし》を頬《ほゝ》に突《つ》く。唾《つば》を吐《は》く。初《はじ》め些《ちよつ》と彼《かれ》には前院長《ぜんゐんちやう》に氣《き》が付《つ》かぬやうで有《あ》つたが施《やが》て其《そ》れと見《み》て、其寐惚顏《そのねぼけがほ》には忽《たちま》ち冷笑《れいせう》が浮《うか》んだので。
『あゝ貴方《あなた》も此《こゝ》へ入《い》れられましたのですか。』と彼《かれ》は嗄《しはが》れた聲《こゑ》で片眼《かため》を細《ほそ》くして云《い》ふた。『いや結構《けつこう》、散々《さん/″\》人《ひと》の血《ち》を恁《か》うして吸《す》つたから、此度《こんど》は御自分《ごじぶん》の吸《す》はれる番《ばん》だ、結構々々《けつこう/\》。』
『何《なに》かの多分《たぶん》間違《まちがひ》です。』とアンドレイ、エヒミチは肩《かた》を縮《ちゞ》めて云《い》ふ。『間違《まちがひ》に相違《さうゐ》ないです。』
イワン、デミトリチは又《また》も床《ゆか》に唾《つば》を吐《は》いて、横《よこ》になり、而《さう》して呟《つぶや》いた。『えゝ、生甲斐《いきがひ》の無《な》い生活《せいくわつ》だ、如何《いか》に
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