入《い》れて置《お》いた手帳《てちやう》も、卷莨《まきたばこ》も、や、ニキタはもう着物《きもの》を悉皆《のこらず》持《も》つて行《い》つた。いや入《い》らん、もう死《し》ぬ迄《まで》、ヅボンや、チヨツキ、長靴《ながぐつ》には用《よう》が無《な》いのかも知《し》れん。然《しか》し奇妙《きめう》な成行《なりゆき》さ。』と、アンドレイ、エヒミチは今《いま》も猶《なほ》此《こ》の六|號室《がうしつ》と、ベローワの家《いへ》と何《なん》の異《かは》りも無《な》いと思《おも》ふてゐたが、奈何云《どうい》ふものか、手足《てあし》は冷《ひ》えて、顫《ふる》へてイワン、デミトリチが今《いま》にも起《お》きて自分《じぶん》の此《こ》の姿《すがた》を見《み》て、何《なん》とか思《おも》ふだらうと恐《おそろ》しいやうな氣《き》もして、立《た》つたり、居《ゐ》たり、又《また》立《た》つたり、歩《ある》いたり、やうやく半時間《はんじかん》、一|時間計《じかんばかり》も坐《すわ》つてゐて見《み》たが、悲《かな》しい程《ほど》退屈《たいくつ》になつて來《き》て、奈何《どう》して這麼處《こんなところ》に一|週間《しうか
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