つ》へ這入《はひ》つて行《い》つたが、ニキタは例《れい》の通《とほ》り雜具《がらくた》の塚《つか》の上《うへ》から起上《おきあが》つて、彼等《かれら》に禮《れい》をする。
『肺《はい》の方《はう》から來《き》た病人《びやうにん》なのですがな。』とハヾトフは小聲《こごゑ》で云《い》ふた。『や、私《わたし》は聽診器《ちやうしんき》を忘《わす》れて來《き》た、直《す》ぐ取《と》つて來《き》ますから、些《ちよつ》と貴方《あなた》は此處《こゝ》でお待《ま》ち下《くだ》さい。』
と彼《かれ》はアンドレイ、エヒミチを此《こゝ》に一人《ひとり》殘《のこ》して立去《たちさ》つた。
(十七)
日《ひ》は已《すで》に沒《ぼつ》した。イワン、デミトリチは顏《かほ》を枕《まくら》に埋《うづ》めて寐臺《ねだい》の上《うへ》に横《よこ》になつてゐる。中風患者《ちゆうぶくわんじや》は何《なに》か悲《かな》しさうに靜《しづか》に泣《な》きながら、唇《くちびる》を動《うご》かしてゐる。肥《ふと》つた農夫《のうふ》と、郵便局員《いうびんきよくゐん》とは眠《ねむ》つてゐて、六|號室《がうしつ》の内《うち》
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