》は其丈《それだけ》にして立上《たちあが》り、彼《かれ》と別《わか》れて郵便局《いうびんきよく》を出《で》た。
丁度《ちやうど》其日《そのひ》の夕方《ゆうがた》、ドクトル、ハヾトフは例《れい》の毛皮《けがは》の外套《ぐわいたう》に、深《ふか》い長靴《ながぐつ》、昨日《きのふ》は何事《なにごと》も無《な》かつたやうな顏《かほ》で、アンドレイ、エヒミチを其宿《そのやど》に訪問《たづ》ねた。
『貴方《あなた》に少々《せう/\》お願《ねがひ》が有《あ》つて出《で》たのですが、何卒《どうぞ》貴方《あなた》は私《わたくし》と一つ立合診察《たちあひしんさつ》を爲《し》ては下《くだ》さらんか、如何《いかゞ》でせう。』と、然《さ》り氣《き》なくハヾトフは云《い》ふ。
アンドレイ、エヒミチはハヾトフが自分《じぶん》を散歩《さんぽ》に誘《さそ》つて氣晴《きばらし》を爲《さ》せやうと云《い》ふのか、或《あるひ》は又《また》自分《じぶん》に那樣仕事《そんなしごと》を授《さづ》けやうと云《い》ふ意《つもり》なのかと考《かんが》へて、左《と》に右《かく》服《ふく》を着換《きか》へて共《とも》に通《とほり》に出《
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