で私《わたし》も狂人《きちがひ》にされて了《しま》つたのです。然《しか》しなあに私《わたし》は奈何《どう》でも可《い》いので、からして畢竟《つまり》何《なん》にでも同意《どうい》を致《いた》しませう。』
『病院《びやうゐん》へお入《はひ》りなさい、ねえ君《きみ》。』
『左樣《さやう》、奈何《どう》でも可《い》いです、縱令《よしんば》穴《あな》の中《なか》に入《はひ》るのでも。』
『で、君《きみ》は萬事《ばんじ》エウゲニイ、フエオドロヰチの言《ことば》に從《したが》ふやうに、ねえ君《きみ》、頼《たの》むから。』
『宜《よろ》しい、私《わたし》は今《いま》は實《じつ》以《もつ》て二《につ》ちも三《さつ》ちも行《ゆ》かん輪索《わな》に陷沒《はま》つて了《しま》つたのです。もう萬事休矣《おしまひ》です覺悟《かくご》はしてゐます。』
『いや屹度《きつと》平癒《なほる》ですよ。』
格子《こうし》の外《そと》には公衆《こうしゆう》が次第《しだい》に群《むらが》つて來《く》る。アンドレイ、エヒミチは、ミハイル、アウエリヤヌヰチの公務《こうむ》の邪魔《じやま》を爲《す》るのを恐《おそ》れて、話《はなし
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