する事《こと》は彼《かれ》は至《いた》つて好《この》んでゐたが、其神經質《そのしんけいしつ》な、刺激《しげき》され易《やす》い性質《せいしつ》なるが故《ゆゑ》に、自《みづか》ら務《つと》めて誰《たれ》とも交際《かうさい》せず、隨《したがつ》て亦《また》親友《しんいう》をも持《も》たぬ。町《まち》の人々《ひと/″\》の事《こと》は彼《かれ》は毎《いつ》も輕蔑《けいべつ》して、無教育《むけういく》の徒《と》、禽獸的生活《きんじうてきせいくわつ》と罵《のゝし》つて、テノルの高聲《たかごゑ》で燥立《いらだ》つてゐる。彼《かれ》が物《もの》を言《い》ふのは憤懣《ふんまん》の色《いろ》を以《もつ》てせざれば、欣喜《きんき》の色《いろ》を以《もつ》て、何事《なにごと》も熱心《ねつしん》に言《い》ふのである。で、其言《そのい》ふ所《ところ》は終《つひ》に一つ事《こと》に歸《き》して了《しま》ふ。町《まち》で生活《せいくわつ》するのは好《この》ましく無《な》い。社會《しやくわい》には高尚《かうしやう》なる興味《インテレース》が無《な》い。社會《しやくわい》は曖昧《あいまい》な、無意味《むいみ》な生活《せ
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