んじ》、同僚《どうれう》とは折合《をりあ》はず、生徒《せいと》とは親眤《なじ》まず、此《こゝ》をも亦《また》辭《じ》して了《しま》ふ。其中《そのうち》に母親《はゝおや》は死《し》ぬ。彼《かれ》は半年《はんとし》も無職《むしよく》で徘徊《うろ/\》して唯《たゞ》パンと、水《みづ》とで生命《いのち》を繋《つな》いでゐたのであるが、其後《そのご》裁判所《さいばんしよ》の警吏《けいり》となり、病《やまひ》を以《もつ》て後《のち》に此《こ》の職《しよく》を辭《じ》するまでは、此《こゝ》に務《つとめ》を取《と》つてゐたのであつた。
 彼《かれ》は學生時代《がくせいじだい》の壯年《さうねん》の頃《ごろ》でも、生得《せいとく》餘《あま》り壯健《さうけん》な身體《からだ》では無《な》かつた。顏色《かほいろ》は蒼白《あをじろ》く、姿《すがた》は瘠《や》せて、初中終《しよつちゆう》風邪《かぜ》を引《ひ》き易《やす》い、少食《せうしよく》で落々《おち/\》眠《ねむ》られぬ質《たち》、一|杯《ぱい》の酒《さけ》にも眼《め》が廻《まは》り、往々《まゝ》ヒステリーが起《おこ》るのである。人《ひと》と交際《かうさい》
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