《こと》を言《い》つてゐて、自分《じぶん》では氣《き》が着《つ》かんのですか。』
 柔《やはら》かに言《い》ふ意《つもり》で有《あ》つたが、意《い》に反《はん》して荒々《あら/\》しく拳《こぶし》をも固《かた》めて頭上《かしらのうへ》に振翳《ふりかざ》した。
『餘計《よけい》な世話《せわ》は燒《や》かんでも可《い》い。』益※[#二の字点、1−2−22]《ます/\》荒々《あら/\》しくなる。
『二人《ふたり》ながら歸《かへ》つて下《くだ》さい、さあ、出《で》て行《ゆ》きなさい。』
 自分《じぶん》の聲《こゑ》では無《な》い聲《こゑ》で顫《ふる》へながら叫《さけ》ぶ。
 ミハイル、アウエリヤヌヰチとハヾトフとは呆氣《あつけ》に取《と》られて瞶《みつ》めてゐた。
『二人《ふたり》とも、さあ出《で》てお行《い》でなさい。さあ。』アンドレイ、エヒミチは未《ま》だ叫《さけ》び續《つゞ》けてゐる。『鈍痴漢《とんちんかん》の、薄鈍《うすのろ》な奴等《やつら》、藥《くすり》も絲瓜《へちま》も有《あ》るものか、馬鹿《ばか》な、輕擧《かるはずみ》な!』ハヾトフと郵便局長《いうびんきよくちやう》とは、此《こ》
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