子《ながいす》の上《うへ》に横《よこ》になる。と、毎《いつ》も妙《めう》な一つ思想《しさう》が胸《むね》に浮《うか》ぶ。其《そ》れは自分《じぶん》が二十|年以上《ねんいじやう》も勤務《つとめ》を爲《し》てゐたのに、其《そ》れに對《たい》して養老金《やうらうきん》も、一|時金《じきん》も呉《く》れぬ事《こと》で、彼《かれ》は其《そ》れを思《おも》ふと殘念《ざんねん》で有《あ》つた。勿論《もちろん》餘《あま》り正直《しやうぢき》には務《つと》めなかつたが、年金《ねんきん》など云《い》ふものは、縱令《たとひ》、正直《しやうぢき》で有《あ》らうが、無《な》からうが、凡《すべ》て務《つと》めた者《もの》は受《う》けべきで有《あ》る。勳章《くんしやう》だとか、養老金《やうらうきん》だとか云《い》ふものは、徳義上《とくぎじやう》の資格《しかく》や、才能《さいのう》などに報酬《はうしう》されるのではなく、一|般《ぱん》に勤務《つとめ》其物《そのもの》に對《たい》して報酬《はうしう》されるので有《あ》る。然《しか》らば何《なん》で自分計《じぶんばか》り報酬《はうしう》をされぬので有《あ》らう。又《また》
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