い》ふた。『實《じつ》は私《わたし》は負《ま》けたのです。で、奈何《どう》でせう、錢《ぜに》を五百|圓《ゑん》貸《か》しては下《くだ》さらんか?』
アンドレイ、エヒミチは錢《ぜに》を勘定《かんぢやう》して、五百|圓《ゑん》を無言《むごん》で友《とも》に渡《わた》したのである。ミハイル、アウエリヤヌヰチは未《ま》だ眞赤《まつか》になつて、面目無《めんぼくな》いやうな、怒《おこ》つたやうな風《ふう》で。『屹度《きつと》返却《かへ》します、屹度《きつと》。』などと誓《ちか》ひながら、又《また》帽《ばう》を取《と》るなり出《で》て行《い》つた。が、大約《おほよそ》二|時間《じかん》を經《た》つてから歸《かへ》つて來《き》た。
『お蔭《かげ》で名譽《めいよ》は助《たす》かつた。もう出發《しゆつぱつ》しませう。這麼不徳義《こんなふとくぎ》極《きはま》る所《ところ》に一|分《ぷん》だつて留《とゞま》つてゐられるものか。掏摸《すり》ども奴《め》、墺探《あうたん》ども奴《め》。』
二人《ふたり》が旅行《りよかう》を終《を》へて歸《かへ》つて來《き》たのは十一|月《ぐわつ》、町《まち》にはもう深雪《み
前へ
次へ
全197ページ中153ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
チェーホフ アントン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング