が、ミハイル、アウエリヤヌヰチは前《さき》に大地主《おほぢぬし》で有《あ》つた時《とき》の、餘《あま》り感心《かんしん》せぬ風計《ふうばか》りが今《いま》も殘《のこ》つてゐると云《い》ふことを。机《つくゑ》の前《まへ》にマツチは有《あ》つて、彼《かれ》は其《そ》れを見《み》てゐながら、其癖《そのくせ》、大聲《おほごゑ》を上《あ》げて小使《こづかひ》を呼《よ》んでマツチを持《も》つて來《こ》いなどと云《い》ひ、女中《ぢよちゆう》のゐる前《まへ》でも平氣《へいき》で下着《したぎ》一つで歩《ある》いてゐる、下僕《しもべ》や、小使《こづかひ》を捉《つかま》へては、年《とし》を寄《と》つたものでも何《なん》でも構《かま》はず、貴樣々々《きさま/\》と頭碎《あたまごなし》。其上《そのうへ》に腹《はら》を立《た》つと直《す》ぐに、此《こ》の野郎《やらう》、此《こ》の大馬鹿《おほばか》と惡體《あくたい》が初《はじ》まるので、是等《これら》は大地主《おほぢぬし》の癖《くせ》であるが、餘《あま》り感心《かんしん》した風《ふう》では無《な》い、とドクトルも思《おも》ふたのであつた。
 モスクワ見物《けんぶつ
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