のだとか、などと云《い》つて、殆《ほとん》ど他《ひと》には口《くち》も開《き》かせぬ、而《さう》して其相間《そのあひま》には高笑《たかわらひ》と、仰山《ぎやうさん》な身振《みぶり》。
『私等《わたしら》二人《ふたり》の中《うち》、何《いづ》れが瘋癲者《ふうてんしや》だらうか。』と、ドクトルは腹立《はらだゝ》しくなつて思《おも》ふた。『少《すこ》しも乘客《じようきやく》を煩《わづら》はさんやうに務《つと》めてゐる俺《おれ》か、其《そ》れとも這麼《こんな》に一人《ひとり》で大騷《おほさわぎ》をしてゐた、誰《たれ》にも休息《きうそく》を爲《さ》せぬ此《こ》の利己主義男《りこしゆぎをとこ》か?』
モスクワへ行《い》つてから、ミハイル、アウエリヤヌヰチは肩章《けんしやう》の無《な》い軍服《ぐんぷく》に、赤線《あかすぢ》の入《はひ》つたヅボンを穿《は》いて町《まち》を歩《ある》くにも、軍帽《ぐんばう》を被《かぶ》り、軍人《ぐんじん》の外套《ぐわいたう》を着《き》た。兵卒《へいそつ》は彼《かれ》を見《み》て敬禮《けいれい》をする。アンドレイ、エヒミチは今《いま》初《はじ》めて氣《き》が着《つ》いた
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