》で、申上《まをしあ》げたいと思《おも》ふのですが。』と、市役所員《しやくしよゐん》は居並《ゐなら》ぶ人々《ひと/″\》の挨拶《あいさつ》が濟《す》むと恁《か》う切《き》り出《だ》した。『あ、エウゲニイ、フエオドロヰチの有仰《おつしや》るには、本院《ほんゐん》の藥局《やくきよく》が狹隘《せまい》ので、之《これ》を別室《べつしつ》の一つに移轉《うつ》しては奈何《どう》かと云《い》ふのです。勿論《もちろん》是《これ》は雜作《ざふさ》も無《な》い事《こと》ですが、其《そ》れには別室《べつしつ》の修繕《しうぜん》を要《えう》すると云《い》ふ其事《そのこと》です。』
『左樣《さやう》、修繕《しうぜん》を致《いた》さなければならんでせう。』と、院長《ゐんちやう》は考《かんが》へながら云《い》ふ。『例《たと》へば隅《すみ》の別室《べつしつ》を藥局《やくきよく》に當《あ》てやうと云《い》ふには、私《わたくし》の考《かんがへ》では、極《ご》く少額《せうがく》に見積《みつも》つても五百|圓《ゑん》は入《い》りませう、然《しか》し餘《あま》り不生産的《ふせいさんてき》な費用《ひよう》です。』
 皆《みな》は
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