少時《すこし》默《もく》してゐる。院長《ゐんちやう》は靜《しづか》に又《また》續《つゞ》ける。
『私《わたくし》はもう十|年《ねん》も前《まへ》から、さう申上《まをしあ》げてゐたのですが、全體《ぜんたい》此《こ》の病院《びやうゐん》の設立《たて》られたのは、四十|年代《ねんだい》の頃《ころ》でしたが、其時分《そのじぶん》は今日《こんにち》のやうな資力《しりよく》では無《な》かつたもので。然《しか》し今日《こんにち》の所《ところ》では病院《びやうゐん》は、確《たしか》に市《し》の資力《ちから》以上《いじやう》の贅澤《ぜいたく》に爲《な》つてゐるので、餘計《よけい》な建物《たてもの》、餘計《よけい》な役《やく》などで隨分《ずゐぶん》費用《ひよう》も多《おほ》く費《つか》つてゐるのです。私《わたくし》の思《おも》ふには、是丈《これだけ》の錢《ぜに》を費《つか》ふのなら、遣《や》り方《かた》をさへ換《か》へれば、此《こゝ》に二つの模範的《もはんてき》の病院《びやうゐん》を維持《ゐぢ》する事《こと》が出來《でき》ると思《おも》ひます。』
『では一つ遣《や》り方《かた》を換《か》へて御覽《ごらん》
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