らば! 貴方《あなた》は知識《ちしき》の有《あ》る人《ひと》です。』
ハヾトフは此時《このとき》少計《すこしばか》り戸《と》を開《あ》けて室内《しつない》を覗《のぞ》いた。イワン、デミトリチは頭巾《づきん》を被《かぶ》つて、妙《めう》な眼付《めつき》をしたり、顫《ふるへ》上《あが》つたり、神經的《しんけいてき》に病院服《びやうゐんふく》の前《まへ》を合《あ》はしたりしてゐる。院長《ゐんちやう》は其側《そのそば》に腰《こし》を掛《か》けて、頭《かしら》を垂《た》れて、凝《じつ》として心細《こゝろぼそ》いやうな、悲《かな》しいやうな樣子《やうす》で顏《かほ》を赤《あか》くしてゐる。ハヾトフは肩《かた》を縮《ちゞ》めて冷笑《れいせう》し、ニキタと見合《みあ》ふ。ニキタも同《おな》じく肩《かた》を縮《ちゞ》める。
翌日《よくじつ》ハヾトフは代診《だいしん》を伴《つ》れて別室《べつしつ》に來《き》て、玄關《げんくわん》の間《ま》で又《また》も立聞《たちぎゝ》。
『院長殿《ゐんちやうどの》、とう/\發狂《はつきやう》と御坐《ござ》つたわい。』と、ハヾトフは別室《べつしつ》を出《で》ながらの話《
前へ
次へ
全197ページ中129ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
チェーホフ アントン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング