末《しまつ》。ミハイル、アウエリヤヌヰチは此頃《このごろ》では始終《しゞゆう》彼《かれ》の留守《るす》に計《ばか》り行《ゆ》く。ダリユシカは旦那《だんな》が近頃《ちかごろ》は定刻《ていこく》に麥酒《ビール》を呑《の》まず、中食迄《ちゆうじきまで》も晩《おく》れることが度々《たび/\》なので困却《こま》つてゐる。
 或時《あるとき》六|月《ぐわつ》の末《すゑ》、ドクトル、ハヾトフは、院長《ゐんちやう》に用事《ようじ》が有《あ》つて、其室《そのへや》に行《い》つた所《ところ》、居《を》らぬので庭《には》へと探《さが》しに出《で》た。すると其處《そこ》で院長《ゐんちやう》は六|號室《がうしつ》で有《あ》ると聞《き》き、庭《には》から直《すぐ》に別室《べつしつ》に入《い》り、玄關《げんくわん》の間《ま》に立留《たちとゞま》ると、丁度《ちやうど》恁云《かうい》ふ話聲《はなしごゑ》が聞《きこ》えたので。
『我々《われ/\》は到底《たうてい》合奏《がつそう》は出來《でき》ません、私《わたくし》を貴方《あなた》の信仰《しんかう》に歸《き》せしむる譯《わけ》には行《ゆ》きませんから。』
と、イワン、デミ
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