恁《かう》云《い》ふです。我々《われ/\》を這麼格子《こんなかうし》の内《うち》に監禁《かんきん》して置《お》いて苦《くる》しめて、而《さう》して是《これ》は立派《りつぱ》な事《こと》だ、理屈《りくつ》の有《あ》る事《こと》だ、奈何《いかん》となれば此《こ》の病室《びやうしつ》と、暖《あたゝか》なる書齋《しよさい》との間《あひだ》に何《なん》の差別《さべつ》もない。と、誠《まこと》に都合《つがふ》の好《い》い哲學《てつがく》です。而《さう》して自分《じぶん》を哲人《ワイゼ》と感《かん》じてゐる……いや貴方《あなた》是《これ》はです、哲學《てつがく》でもなければ、思想《しさう》でもなし、見解《けんかい》の敢《あへ》て廣《ひろ》いのでも無《な》い、怠惰《たいだ》です。自滅《じめつ》です。睡魔《すゐま》です! 左樣《さやう》!』と、イワン、デミトリチは昂然《かうぜん》として『貴方《あなた》は苦痛《くつう》を輕蔑《けいべつ》なさるが、試《こゝろみ》に貴方《あなた》の指《ゆび》一|本《ぽん》でも戸《と》に挾《はさ》んで御覽《ごらん》なさい、然《さ》うしたら聲《こゑ》限《かぎ》り叫《さけ》ぶでせう
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