て、取《と》つて遣《や》る。毎朝《まいあさ》起《おき》ると同室《どうしつ》の者等《ものら》にお早《はや》うと云《い》ひ、晩《ばん》には又《また》お休息《やすみ》なさいと挨拶《あいさつ》もする。
彼《かれ》の發狂者《はつきやうしや》らしい所《ところ》は、始終《しゞゆう》氣《き》の張《は》つた樣子《やうす》と、變《へん》な眼付《めつき》とをするの外《ほか》に、時折《ときをり》、晩《ばん》になると、着《き》てゐる病院服《びやうゐんふく》の前《まへ》を神經的《しんけいてき》に掻合《かきあ》はせると思《おも》ふと、齒《は》の根《ね》も合《あ》はぬまでに全身《ぜんしん》を顫《ふる》はし、隅《すみ》から隅《すみ》へと急《いそ》いで歩《あゆ》み初《はじ》める、丁度《ちやうど》激《はげ》しい熱病《ねつびやう》にでも俄《にはか》に襲《おそ》はれたやう。と、施《やが》て立留《たちとゞま》つて室内《しつない》の人々《ひと/″\》を※[#「目+旬」、第3水準1−88−80]《みまは》して昂然《かうぜん》として今《いま》にも何《なに》か重大《ぢゆうだい》な事《こと》を云《い》はんとするやうな身構《みがま》へをす
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