て見《み》て、其《そ》れが奈何《どう》です、此《こ》の六|號室《がうしつ》にゐるのよりも惡《わる》いでせうか。此《こゝ》に入《い》れられてゐるよりも貴方《あなた》に取《と》つて奈何《どう》でせうか? 私《わたくし》は此《こゝ》より惡《わる》い所《ところ》は無《な》いと思《おも》ひます。若《も》し然《さ》うならば何《なに》を貴方《あなた》は那樣《そんな》に恐《おそ》れなさるのか?』
此《こ》の言《ことば》にイワン、デミトリチは大《おほい》に感動《かんどう》されたと見《み》えて、彼《かれ》は落着《おちつ》いて腰《こし》を掛《か》けた。
時《とき》は丁度《ちやうど》四|時過《じす》ぎ。毎《いつ》もなら院長《ゐんちやう》は自分《じぶん》の室《へや》から室《へや》へと歩《ある》いてゐると、ダリユシカが、麥酒《ビール》は旦那樣《だんなさま》如何《いかゞ》ですか、と問《と》ふ刻限《こくげん》。戸外《こぐわい》は靜《しづか》に晴渡《はれわた》つた天氣《てんき》である。
『私《わたくし》は中食後《ちゆうじきご》散歩《さんぽ》に出掛《でか》けましたので、些《ちよつ》と立寄《たちよ》りましたのです。もう
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