ざう》を爲《し》たものだ。』と、院長《ゐんちやう》は思《おも》はず微笑《びせう》する。『では貴方《あなた》は私《わたくし》を探偵《たんてい》だと想像《さうざう》されたのですな。』
『左樣《さやう》。いや探偵《たんてい》にしろ、又《また》私《わたくし》に窃《ひそか》に警察《けいさつ》から廻《ま》はされた醫者《いしや》にしろ、何方《どちら》だつて同樣《どうやう》です。』
『いや貴方《あなた》は。困《こま》つたな、まあお聞《き》きなさい。』と、院長《ゐんちやう》は寐臺《ねだい》の傍《そば》の腰掛《こしかけ》に掛《か》けて責《せむ》るがやうに首《くび》を振《ふ》る。
『然《しか》し假《か》りに貴方《あなた》の云《い》ふ所《ところ》が眞實《しんじつ》として、私《わたくし》が警察《けいさつ》から廻《まは》された者《もの》で、何《なに》か貴方《あなた》の言《ことば》を抑《おさ》へやうとしてゐるものと假定《かてい》しませう。で、貴方《あなた》が其爲《そのため》に拘引《こういん》されて、裁判《さいばん》に渡《わた》され、監獄《かんごく》に入《い》れられ、或《あるひ》は懲役《ちようえき》に爲《さ》れるとし
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