となかろうと、事ここに及んではいかんとも施す術がなかった。将校連は服装をととのえ、念入りにブラシをかけて、さてがやがやと群をなして地主屋敷を捜しに出かけた。教会のそばの広場で道をきくと、地主様さ行くなら下の道からも行ける――それは教会の裏手から川さ下りて、川ぶち伝いにお庭まで出れば、あとは並木道がちゃんと目当ての場所へ連れて行ってくれる、もう一つは上の道で――これは教会から真直ぐ往還さ行けば、村をはずれて四五町ほどで地主様の穀倉に行き当る、とそんな工合に教えてくれた。将校たちは上の道をとることにした。
「フォン=ラッベクってそもそも何者だろうな?」と彼らは途々評定しあった。「プレヴナの戦でN騎兵師団の指揮をした、あの人じゃないかな?」
「いや、あれはフォン=ラッベクじゃない、ただのラッベだ、それにフォンなしだ。」
「だがまあ、なんていい天気だい!」
地主の穀倉のとっつきの一棟のところで、道は二筋に分れていた。一方は真直ぐに走って夕闇の中へ消えており、もう一つは右手へ折れて地主屋敷に通じていた。……将校たちは右へまがると、声を低めて話しはじめた。……道の両側にはずっと、赤い屋根をした石
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