接吻
Поцелуй
アントン・チェーホフ Anton Chekhov
神西清訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)淡黄毛《さめげ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)紫|丁香花《はしどい》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]
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 五月二十日の晩の八時のこと、N予備砲兵旅団の六個中隊が全部、野営地へ赴く途中で、メステーチキという村に一泊すべく停止した。砲のまわりで世話をやくのに忙がしい将校があるかと思えば、馬を飛ばして教会の柵のほとりの広場へ集合して、宿舎係の説明に聴き耳を立てている将校もあるという、てんやわんやの真最中に、教会のかげから、馬にまたがった平服の男が一人姿を現わしたが、その乗っている馬がまた一風変った代物だった。淡黄毛《さめげ》の小作りな馬で、きれいな頸と短い尻尾をしているが、その歩き方がまっすぐではなく、なんだか横歩きでもしているような工合で、おまけに四つ脚でひょこひょ
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