の男子の位置にわが身を置いて考えることは、なんとしても出来ない相談だった。一時は彼も同僚たちの勇気機敏な立※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]りぶりを羨しく思って、人しれず胸を傷めたこともある。自分が弱気で、猫背で、ぱっとしない男で、おまけに胴長で、山猫みたいな頬髯まで生えていて――といった意識が彼を深刻に腐り込ませていたものだが、しかし年とともにこの意識にも馴れっこになって、今では踊り※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]ったり声高に談笑したりしている連中を見ても、もはや羨しいなどとは思わず、ただふっともの悲しい感動に誘われるだけのことだった。
 やがて四班舞踏《カドリール》がはじまると、フォン=ラッベク第二世は踊らない連中のところへやって来て、二人の将校を球突に誘った。その二人は賛成して、彼と一緒に広間から出て行った。リャボーヴィチは手持ち無沙汰のあまり、せめて恰好だけでもみんなの行動に一枚加わりたいと思って、この連中のあとからふらふらついて行った。広間を出て彼らは客間へ抜け、それからガラスばりの細長い廊下へ出て、そこからある一室へ通ると、彼らの出現とともにぱっと飛び立つ
前へ 次へ
全48ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
チェーホフ アントン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング