所について御意見があれば、この議場に於いてそれを指摘されたい。
 御心配は無用である。若し朗読する個所が穏かでないとお思ひになつたら、議長、どうか御注意を願ひます。
 ルグラン君――議会の検閲が不法だと云ふんでせう。(笑声起る)
 ミルラン君――作中の一人物、プウレットが、その朋輩の女エリザに向つてかう云ひます。「こいつあ、をかしいや……」なるほど、かういふ言葉は、わがアカデミイでは使ひません。が、われわれは、やはり、アカデミイの会員ではないのであります。(笑声)「こいつあ、をかしいや。お前がそんなだつてこた、夢にも知らなかつたね、だれかにのぼせちまうなんてさ……。だつて、今まで、お前のつていふのが一人でもゐたかい……。男だらうが女だらうが、お前にうんて云はせたものは、一人だつてゐやしない……。あたしやお前つて女は、さういふ風にできてないんだと思つてたよ……。ところが、さては、味を覚えたね……」ここが、問題にすればできる一ヶ所であります。(議場騒然)
 どうです。本員は諸君と同様厳正ではありませんか。
 第二の個所、同じ人物の白《せりふ》であります。「ちえツ、およしつたら、くだらない理
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