窟は……どうせ女ぢやないか、あたしたちは……。それに、人様の御厄介になつてやしないんだからね。人殺しをした覚えもなけれや、泥棒したことだつてありやしない。お前の云ふことを聴いてると、まるで、あたしたちは罪人ぢやないか……。ああして、家のなかで働くのが……」(議場騒然)
左翼の一議員――傍聴禁止を求めます。
ミルラン君――諸君、つまり、本員も、ここを削除すべきだと思ふのであります。然るに検閲官はそれをしなかつた。「世間にいくらだつてゐる、あの亭主持ちの女と、一体どう違ふんだい……亭主を持ちながら、それが不足でいろんなことをする女とさ、……」それから、最後の一ヶ所は、プウレットが、「見ておやりよ、この色気狂ひをさ……」と云ふと、エリザが「あらさうぢやないんだよ……。だつて、もう十五日も家ん中ばかりに引つ込んでたんだもの……。たまに一日ぐらゐ、檻の外で暮したいよ……いい天気だね……ぶらぶら歩いて見たいね」すると、プウレットが「云つとくけど、うつかり、つかまつたまま眠つちまつちや駄目だよ……お神さんは、日曜ときちや、それこそ手におへないんだからね……時間に間に合ふやうに帰つといでよ……」(
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