が文部芸術局長に向つて発せられたやや激越な質問は、本員の個人的印象によれば、少からずかの政府高官を悩ましたらしく思はれます。(微笑)……然しながら、年額五百法の補助金は自由劇場の監督を便ならしめ、今日「娼婦エリザ」の上演を禁止する結果を生んだものとすれば、この小額の支出は必ずしも無益でなかつたと云はなければなりません。
諸君、本員はこの仮定から遠ざかります。そして、単にこの戯曲がいかなる動機によつて、上演禁止の厄に遭つたかを研究し、その真相を探知したいと思ひます。即ち、禁止の理由は左の二点以外にはない――作者が作中に於いて支持しようとした思想、及び、その思想を包んでをる形式。
先づ、その形式でないことは、次の二つの理由によつて明かであります。
第一は検閲官が作者に対し、何等修正削除を求めなかつたことであります。……
嘗て、ロクロワ氏が文部大臣在職当時、同じゴンクウル氏の「ジェルミニイ・ラツセルトゥウ」をオデオン座で、上演した際、検閲官は作者にある部分の修正を希望し、作者はこれを快諾した事実もあります。これが検閲官の最も単純な、そして第一に尽すべき義務なのであります。
……どう
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