のうちはなんでもないが、だんだん二人の感情が昂じて来る。(私語が起る)
諸君、御心配は御無用であります。決して不穏な言辞は弄しないつもりであります。
若い兵卒は、エリザに向つて、この墓地のなかで、自分の自由になることを求めます。彼女は拒絶します。兵卒は腕づくで目的を達しようとする。彼女は遂にその情人を殺すのであります。第一幕はこれで終ります。第二幕は法廷の場であります。(議長に向ひ)作者の意図を極めて正確に伝へたつもりですが……。
議長――さやう、適当に削除はしてをられますが……。(笑声)
文部大臣――第二幕は殆ど弁護士の弁論を以て、終始してをります。この弁論は、実に見事であります。つまり、先程ミルラン君が述べられた娼婦の運命より説き起して、社会制度の不備を指摘し、エリザの罪はその実、無知と病毒と貧窮の罪であると断じてをるのであります。然しながら、結局、エリザは死刑の宣告を受けるのであります。
第三幕は、別に、この問題と関係がありませんから省略します。
筋は大体右の通りであります。成程これだけでは、何等不都合はないと思はれるでありませう。取扱はれてをる問題は、社会哲学の問題
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