であります。ただ、その研究の態度如何、発表の形式如何が考慮の対象となるのであります。
本大臣は極めて困難な立場にあります。一方、劇場に於ける「娼婦エリザ」の上演を禁止しながら、いま、この議場に於いて、その内容を公開しようとしてをるのであります。
リヴェ君――ここは劇場ではない。
文部大臣――……そこで、先程、ミルラン君が希望された如く、本大臣も、万一、口にすべからざることを口にした際は、議長に於いて、宜しく制止の労を取られんことを希望します。(私語するものもあり)
先づ、最初に、「娼婦エリザ」の梗概を簡単に申上げます。(議場騒然)
議長――文部大臣の演説を聴かれないつもりですか。(笑声)
文部大臣――簡単に筋を申します、エリザは朋輩の女三人と一緒に家を出ます。日曜日であります。ブウロオニュの森の一隅に、訪れる人もない墓地がある。そこへ散歩に出かけるのであります。そのうちの一人、即ちエリザは、自分のところに通つて来る客のうち、一人の若い兵卒に特別に心を惹かれてゐる。朋輩の女共はこの恋愛について、彼女をひやかしなどする。そこへ、例の兵卒がやつて来る。エリザと二人きりになる。初め
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