)然しながら、問題はわが仏国の文学芸術に関する極めて重大な問題でありますから、敢て議員諸君の配慮を煩はす次第であります。(左翼議席より一斉に拍手起る)
 レオン・ブウルジュワ君(文部大臣)登壇――ミルラン君の御質問に対して、なるべく御満足なお答へを致したいと思ひます……。最も慎重に、最も自由な立場から、戯曲「娼婦エリザ」を研究審議致しました結果、公衆道徳の上から見まして、上演を禁止する必要があると信じたのであります。
 抑も検閲といふ法規が存在し、それを文部大臣が実施することになつてをりますが、時によると文部大臣の取つた処置を、不適当であると云ふものもあるでありませう。また時によると、文部大臣自ら自分の取つた処置を悔む場合もあることと思ひます。実際、検閲といふ役目ぐらゐ機微なものはありますまい。禁止をしたがために万人の恨を買ふこともありませう。許可したがために、また万人の譏りを受けることもないとは云へない。ただし作者を除いてであります。(笑声)
 兎に角、検閲といふものが存在する、これはどうすることもできない。事ある毎に、新聞などで検閲の不法を鳴らすけれども、決してこの制度はなくならな
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