来の迷妄を打破し、あらゆる困難を征服して、最も合理的な自己訓練を行ふこと。
一、劇団当事者は、俳優志望者の採用標準を、全然改めること。即ち、素質の点で、「知性」と「教養」と、その内的生活より生ずる「人間的魅力」をより重要視し、近代社会の堂々たる装飾的役割を演ずるに応はしい人物を選ぶこと。
一、「先駆的」なる美名をかかげ、徒らに晦渋な表現、幼稚な気取り、唯我独尊的理論を押しつけないこと。(尤も、ほんたうに若いものたちだけでやるその場限りの仕事なら、また何をか云はんや)
一、「新劇」の観客層について十分認識を深めること。今日、「新しい芝居」即ち「現代の演劇」を求めてゐる見物とは、所謂知識階級の一部にすぎない。しかし、ほんとに「良いもの」がわかり、「良いもの」なら見ようと思つてゐる人々が、それほど少くはないのである。彼等は、自分たちが金を出してまで、「新しい芝居」を育てようとは思つてゐないが、金を出す値打のあるものなら、悦んで「自分のために」見に来るのである。彼等は時間が惜しい故に、何よりも芝居で「退屈する」ことを好まぬ。自分で考へたいことを沢山もつてゐるので、劇場で考へさせられることもあま
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