新劇の始末
岸田國士
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新劇とは?
「新劇」といふ言葉は最初誰がどういふ意味で使ひ出したか知らぬが、「新しい芝居」といふことを漢語で云つたまでで、専門的な術語と見做すわけに行かぬと思ふ。従つて、ある限られた範囲のものを指すためには、甚だ不都合な言葉である。
今日の通念としては、大小の商業劇場が、営利を目的として一般大衆に見せる芝居は、歌舞伎も新派も、その他何々合同劇といふやうなものも、一切、それが如何に「新しき試み」であらうと、世間もわれわれもこれを「新劇」と呼ばないのである。
ところが、歌舞伎や新派の俳優が、一度臨時にもせよ興行主の損益計算を離れ、さほど新しくもない「試み」を、短時日の公演で見せるとなれば、彼等自らは勿論、世間もこれを「新劇」と呼んで疑はないのである。
さうかと思ふと、学生風の素人が、たまたま道楽と茶目ツ気から、親からせびつた小遣を出し合つて手当り次第の脚本を何々小劇場で朗読してみせると、これもや
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