続けさまにおつしやるといふのかい。さうしたら、あたしは、お前さんがさつき云つたことを申上げるよ。玉の肌とは一体、なんのことでございませうつて……。
男優E  これは異《い》なこと……。御前様《ごぜんさま》は、大きくお肯《うなづ》きになります。
女優A′[#「A′」は縦中横]  そして、お前は、お手討だ。
男優E  如何《いかが》でございませう。お互ひに逃れられぬ運命、この辺で、妥協の道はございますまいか。
女優A′[#「A′」は縦中横]  喉がかはいたよ、あたしは。
男優E  畏まりました。あの音はたしかに泉の音でございます。ひと走り、確めて参りませう。
女優A′[#「A′」は縦中横]  なに、あたしも一緒に行くよ。
男優E  そこはお危《あぶな》うございます。野茨が茂つてをります。さ、こちらをお通り下さい。(案内をする身ごなし)お待ち遊ばせ。只今、わたくしが場所をこしらへます。お召物をお濡らしにならないやうに……。どれ、お先へ、お毒味をいたしませう。いや、これは冷《つめた》い。水道の水とは比較になりません。天然のアイスオーターでございます。
女優A′[#「A′」は縦中横]  さあ、お
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