、果して、お前の総てを、わしと同じ眼で見てくれるかといふことだ。
二葉  (訝しげに父の顔を見守る)
州太  こんなことを云つてゐても仕方がない。お前は、お父さんにかまはず、これから、来た道を下へ降りるといゝ。迷ふ気づかひはない。それとも、やつぱり、日の出を見てからにするか。もう、そろそろ、夜が明けて来た。
二葉  かうして、お父さんのお話を聴いてゐると、今、眼の前に起らうとしてゐることが、なんだか、自分とは関係のないことみたいな気がしますわ。そんな筈はないのに、どうしてゞせう。やつぱり、そんなことは起らないにきまつてるからだわ。さうよ。さ、もう、あたし、なんにも見なくつていゝから、すぐに引つ返しませう(父の腕を取り、無理に起たせようとする)ようつたら……。こんなところに、何時までもゐちやいけないわ。
州太  (やつと起ち上り)さ、お前は、此処にゐない方がいゝ。それぢや、二葉、気をつけて帰りなさいよ。(噴火口の方に近づいて行く)
二葉  (驚いて)お父さん……何処へいらつしやるの。(追ひ縋り、その腕を捉へて)いけません。止して、ね、止して……後生だから止して……。あゝ、誰か来て頂戴……
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