出て来る。
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新井  やつぱり行つてみないと、どうしても気が済まない。なんだか、落ちつかなくつて……。
とね  (追ひ縋るやうに)だつて、後は、あたし一人よ。こんなところで、ほかにだあれもゐなくつちや、あたし……(新井の服の袖を捉へ)ねえ、新井さん……あたし、淋しいのよ……。後生だから、今夜だけ、……あたしの側にゐて……。ねえ、ほんとに、あたし……怖いんだつたら……。

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彼女は、新井の腕に取り縋つたまゝ、頼むよりも、寧ろ、制する形で、テラスの端まで来る。
新井は、それを振り払ふ力がないやうに見える。
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     四ノ二

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火口壁を形づくる山の頂上。――払暁前一つ時。
左下りに溶岩と焦石の急斜面。右手は、断崖になつた噴火口の一部、濛々たる噴煙。
山の嶺を掠めて、遥かに、地平線。
左手から、二葉が、登山の服装で、斜面を登つて来る。
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二葉  (後ろを振り返り)なにしてらつしや
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